
婦人科看護師きくとまです。今回は性同一性障害である「FTM」の方の治療のひとつであるホルモン注射についてお伝えしたいと思います。
女性の体で生まれてきたのですが、自分の性別は男性であると認識している「FTM」と呼ばれる方。治療方法は様々ありますが、治療は必ずやらなければいけないものではありません。 自身にとって必要であると考えておられる方へ、国内で治療として主に行われているホルモン補充療法による注射について、その副作用と作用、注射の間隔等についてお伝えしたいと思います。
FTMとは?

遺伝子的には女性、外観も女性として生まれてきましたが、自分は男性であると確信し、男性としての生活を望む(生活している)人のことをこのように呼びます。性自認の形を表す用語であり、FTMでも、治療の方法や段階・手術の有無や恋愛対象は人それぞれです。
ホルモン補充の注射開始後に見られる身体の変化

FTMの方へ国内で一般的に行われている方法は注射です。(飲み薬、塗り薬なども有)
男性ホルモンを数週間おきに定期的に注射することで、生理が止まり、声が太くなり、体毛・ヒゲが濃くなる等身体的変化が起こります。乳腺はあまり小さくはなりません。そのため、乳房を切除される方もいます。また、ニキビができやすくなる、体臭が強くなる、AGA(男性型脱毛症)などがマイナス面です。その他、肝機能障害やコレステロール値の上昇、体重増加などがあります。
実際によくみられる副作用として、ざ瘡(ニキビ)、特に頬の部分、上体部(肩から腕にかけて)がありました。その他、腕や足などの体毛が硬く、増えたというのもよく聞きます。20代と若いのに肝臓の機能が悪くなった方、中性脂肪が増えた方もおりました。10年以上男性ホルモンの注射を続けている方では頭髪が薄くなってきた方もいます。
注射はどれくらいの間隔でおこなうの?
主な男性ホルモン製剤はエナルモンデポー、テスチノンデポー、ネビドデポーなどとなります。男性ホルモンは2~3週間ごとに投与するものと3~4ヶ月ごとに投与する製品があるようですが、当院で行われている、テスチノンデポー、エナルモンデポーを注射している方は3週間ごとに投与とされている方がほとんどです。しかし、年齢、体調や疾患などにより、4週間ごと、もしくは注射の量を減らしている方もいらっしゃいます。それは、主治医との話し合いの後に決められます。
自分が求める男性の身体になるために
日本の性同一性障害者特例法では、「生殖腺の機能を永続的に欠く状態」つまり精管や卵管の切除手術などで生殖能力を失わなければ、戸籍上の性別を変えることができません。でも、それを行うには高額な金額が必要となります。それを行わず、自分の求めている理想の体型になるためには、ホルモン治療は必要なものとなるでしょう。
FTMの治療は様々ありますが、治療は必ずやらなければいけないものではありません。 自身にとって必要であると考える治療を取捨選択していくことが大切です。
FTMを問わず、自分が自分らしく生きること

ホルモン補充療法を行うことで、自分が望んでいる身体に変化していくのがとても喜ばしいという一方で、変化していく身体には必要ないと、乳房の切除をおこなう方もたくさん見てきました。乳房切除を希望されるほとんどの方が海外で手術をされていました。しかも高額の料金を払って。しかし、コロナ禍で海外に行けるのも容易ではなくなり、現在は、国内で子宮を取るという話を聞きます。
性同一性障害を有する人を取り巻く医療的環境や社会的・心理的状況は、必ずしも整っているわけではありません。医療を受けられる施設が限定され、保険が適用されず、そして法律の整備がまだまだです。自分自身が望む身体になること、そして、満足できる方法が、命の危険なく出来ることを望み、私自身が、少しでもその方たちの力になれることを願っています。

